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2024年4月15日 (月)

小説家 三浦哲郎

作・演出 佐々木功

漁火見える丘ありて ―若き日の三浦哲郎―

2024年9月21日㊏ 18:30開演

         22日㊐ 13:00開演

八戸市公会堂文化ホール(公民館ホール)

一般前売/2,200円 中高生前売/900円(当日各300円増し)

チケット発売予定 7月21日開始

〈取扱い予定店〉八戸市民劇場・HPMはっち・八戸市公会堂・美容室ココ・ラピア

🔲前売料金での入場ができるメール・電話による事前予約も御座います。その場合、受付の混雑を防ぐ為に釣り銭不要のご準備をお願い申し上げます。🔲事前予約受付開始7月21日 🔲上演時間は125分前後を予定 🔲全席自由

 

〈前号に続き〉

 (三)殺風景な宿直室と自分自身の〈血〉

 白銀中学校は、町の裏手の荒れた丘の上に建っていました。そのころは宿直当番があり、男の教師たちが順番に学校の宿直室に宿泊しなければなりませんでした。家庭持ちの先生たちはその当番をいやがっていました。家庭もちでなくても誰でも、寂しい学校で独りきりの夜を過ごすことを嫌がっていました。

 ある晩、風邪気味だという初老の教師に頼まれて、代わりに宿直当番を引き受けてやりました。それが忽ち職員室にひろがって、一番若い三浦さんに宿直当番を押しつけるようになりました。一週間のうち三日も四日も寝泊まりするようになりました。

 宿直室の隣に住んでいた用務員さん夫婦は、夕食を済ませるとさっさと灯を消してねてしまい、宿直の夜は、心細くて思いのほか長く寂しいものでした。七時と九時半に、校舎の見回りをする義務があり、寝る前に宿直日誌をつけねばなりませんでした。風のない夜、校舎は暗く静まり返って、耳鳴りがしました。風の吹く夜は、校舎の窓という窓ががたがたと鳴り、きまってこわい夢をみたということです。宿直室は床の間と押し入れとちいさな炉のほかには、家具もない六畳間の和室でした。東向きに、雨戸もカーテンもない窓があり、夜、その窓を細目に開けて覗くと、大地の闇の上に広い星空がみえ、月夜には、しらじらとした荒野が荒涼と広がっていました。

 押し入れには、薄い夜具一式と、薄い座布団が数枚入っており、その一枚を炉端におき、その上に座ってお茶を飲みながら、しょんぼりと煙草をふかしていました。

森林 康著「講話集 三浦哲郎とその文学」より抜粋

 

劇団やませホームページ http.//yamase.mimoza.jp/

 

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